「お寺の本堂の一番奥まった暗いところにあって、ほこりだらけで、すすけていて、決して近よってはいけないもの」。子供のころの私は仏像に対してこんな意識を持っていました。
大人になって、ニューヨークのメトロポリタン美術館で、フロアの真ん中に展示されている仏像を見て、こんなに晒していいの?と戸惑いました。しかしながら、初めて仏像を360度から見られる感動は大きく、暗い本堂の奥にある姿より、むしろ近くで見たほうが厳かな気持ちになるものだと実感しました。今ではCTスキャンやマイクロスコープで仏像内部も見られ、さまざまな楽しみ方が提案されるようになって、仏像鑑賞を楽しめるようになりました。
昨日は天気が良かったので、国立博物館(平成館)で開催されている「運慶展」へ行ってきました。目的は運慶の父、康慶の「四天王立像」と運慶の「毘沙門天立像」。なにかの写真で見たときに実物を見てみたいと思った作品です。
康慶の四天王の頭光の炎や厳しい表情に力強さを、運慶の毘沙門天はきめ細かさを感じました。衣の文様なども近くで見るとうっすら残っているのが見えます。運慶の踏まれている邪鬼はどこかユニーク。背後に回ると、邪鬼の踏ん張っている脚の筋肉の盛り上がりとか、締めたふんどしの皺(どこ見てるんだ?!(笑))とか、細かいところまで見られました。
運慶の息子たちや慶派仏師の作品では、「龍燈鬼立像」や「十二神像立像」は人気です。平日でもけっこう混雑しましたが、見たかった仏像を間近で見られて満足でした。
さて、国立博物館に11時頃に到着しましたが、入場待ち時間が30分ほどあったので、落ち着くまで本館の展示を見ていたら、刀剣の展示エリアで若い女性たちの長い列。どうやら「三日月宗近」をスマホで撮るために並んでいるようでした。ギフトショップでも刀剣の絵葉書だけが品薄。
私はずっと歴史が苦手でしたので、若いお嬢さんたちを惹きつける刀剣の魅力はなんだろうと、ツイッターで調べてみるとオンラインゲームの「刀剣乱舞」に行き着きました。名刀を擬人化するゲーム、こんなに人気がある「三日月宗近」はイケメンなのかしらんと検索してみると...
ああ、納得(笑)。歴史漫画やゲームをきっかけに歴史に興味が持てるのはいいですよね。今回の「運慶展」でも、さいとうたかを作の劇画『運慶』が発売されたようです。退屈な教科書よりずっと理解が深まりそうです。