鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

甘美な至上命令

 ブログにあげようと思いつつ、読了してからずいぶん経ってしまいました。

 『甘美な至上命令』 キャシー・ウィリアムズ著

甘美な至上命令 (ハーレクイン・ロマンス)

 ツイッターbot系でこの作品から引用された台詞がおもしろそうだったので選んだものの、作品の中で使われる台詞とは印象が異なるものだと実感しました。

 (以下ネタバレ)

 実業家レアンドロ・ペレス、その個人秘書エミリー・エディソンが主人公です。

 レアンドロ・ペレスは実業家でハンサムで女性はみ~んな彼が好きなるというお約束を踏まえたうえで読み進めていきましょう。

 女性はみな僕のことが好きだ。まずまずの容貌と莫大な貯蓄額による相乗効果のおかげだ。レアンドロはうぬぼれではなく規制事実としてそう考えていた。

  そして秘書のエミリーは、長く仕えた年配の前秘書から引き継ぎの際にこんなことを言われます。

 ボスの秘書になった若い女性は誰もが、彼をひと目見るなり、頭がまともに働かなくなってしまうの。でも、あなたは地に足がついているようね。

 そんなモテモテな上司の下で働くエミリーはレアンドロの魅力に動じることなく働いていましたが、彼の恋人に送るプレゼント選びなどもさせられていて、別れ話がこじれたときもその対処に追われるようなことも頻繁にあり、退職を決意します。

 エミリーは楽しく働いているように見えたし、報酬も申し分ないはずと思っていた俺様系のレアンドロは面食らい、退職理由を聞きます。

 つきあった女性たちへのお別れのプレゼントやらデートに使うオペラや映画のチケットの手配など、とうてい秘書の仕事は言えないようなことまでさせられたことを告げます。

 「そんなこと言われるなんて信じられない」

 「それはあなたが、耳に痛いことを言われるのになれていないからだわ」

  不意打ちを食らったレアンドロの脳内は速攻エロモードに変わります。

 その下にはどんな体が隠れているんだ?普段はきわめてクールなエミリーが、今は感情をあらわにしている。そんな彼女と体を重ねたら、どういう感覚が味わえるのだろう?エミリーの髪を下ろしたら、どうなる?考えてみれば、僕は彼女の髪の長ささえ知らない!

 秘書の髪の長さなど知らなくいいですよと突っ込みたくなります(笑)。

 突然の退職宣言にレアンドロはライバル会社に移ってここで得た機密情報を利用するつもりかと責めます。これから人材派遣会社と連絡するところだと否定するエミリー。

 レアンドロは、カリブ海のホテルのグランドオープンにエミリーを連れていくと言い出します。理由はエミリーが機密情報を買いたがる人との接触を避けるため、そして不法アクセスによる情報漏洩を防ぐ策を講じるため。って、変ですよね、これ(笑)。

 機密情報を漏らさないことは雇用契約書に盛り込み済みだと思うし、実業家だったらコンプライアンスぐらい整えておけよと言いたいです(笑)。

 もちろん、エミリーは拒否。さらに理由を追求するレアンドロ

 「理由は?」

 「約束があるんです。」

 「その約束は辞表と関係があるのか?」

 「私はロンドンを離れるんです。結婚するので。」

 レアンドロは耳を疑った。

 「信じられないな」

  ハラスメントの境界線をレアンドロの言葉がさまよいます。

 「いや、君が時間外労働で悩んでいたことは一度もなかった。婚約者がいれば、不満を訴えていたはずだからな。で、そいつとはいつからの付き合いなんだ?」

 「あなたには関係ないでしょう」 

  エミリーの返答は当然ですよね。さらに、

 「君に婚約者がいたという新事実に興味を示したことが、そんなに意外か?」

 「君が婚約指輪をはめていないのが不思議でね」

 「今朝皿を洗うときに外したのかもしれないが、それまではめていたのなら、僕も見た記憶があるはずだ」

  「うざくない?こいつ」と突っ込みつつ、もしエミリーがレアンドロの質問に不快感を感じれば、パワハラ、セクハラになりそうですが、二人の無意識の恋愛感情があるからこそ、ロマンス・ストーリーが成り立つわけです。

 結局、退職の条件として2週間の出張へ同行することになります。エミリーと婚約者オリバーは妥協的な結婚なので、エミリーの出張を伝えてもオリバーは疑うことなく承諾します。

 そして出張先の高級リゾートで、レアンドロのエロ・モードは全開になり、エミリーを誘惑します。というか、AV男優みたいな台詞でドン引きです。

 濃厚キスのあと

「お願いだから...」エミリーは体を引いたものの足が動いてくれなかった。

 「なんだ?お願いだから今すぐここで奪ってくれと?」

 「違うわ」エミリーは二歩下がり、レアンドロの呪縛から懸命に逃れようとした。

  「だが、僕に奪ってほしんだろう?」レアンドロは再び距離をつめた。

 「僕にはその理由がわかる。君は結婚するべきではない相手と不当な理由によって結婚しようとしている。それで安全策をとったつもりかもしれないが、本当は僕にひかれているし、自分の気持ちを確かめてみたいと思っている。違うか?」

 「違うわよ!」エミリーはレアンドロに背をむけて波打ち際まで歩いていった。

  この後もしつこく迫るわけですよ。

 「こうして欲しいんだろう?」とか「オリバーと結婚する前に二人の体が欲していることをしよう」とか、俺様エロ台詞が次々出てきて、胸やけしそうです(笑)

 エミリーが拒否したわけですから、パワハラによるレイプと言われてもおかしくないような描写です。エミリーも本音はレアンドロが好きという大前提で読むのですが、濃厚な描写が多すぎて、そこはもう週刊実話状態(笑)

 結局、エミリーはオリバーと別れ、レアンドロに「実は愛してるの」と告白。婚約解消の理由やらエミリーの家族の話をして素直な姿を見せます。その後、レアンドロが「僕も愛してる」とプロポーズのハッピーエンド。

 ロマンス的ドキドキ感とか全くなしの作品です。めくるめく官能の世界を堪能したい方にはおすすめですが、レアンドロを真似して「こうして欲しいんだろう?」と部下の女性に手を出したら、パワハラ&セクハラで訴えられる確率はかなり高いと思われます(爆)