鈴の本箱

本のこと、あれこれ(覚書)

マネー喰い

 新聞を読む側の私は情報を受け身で得ています。でも、新聞記者たちがどのような取材を経て記事にしているのかまではわかりません。政治家を取り囲んでレコーダーを突き出して質問したり、背後に聞き耳立ててメモを取っている姿をテレビで見ても、それだけでは彼らの行動すべてを想像することはできません。

マネー喰い 金融記者極秘ファイル (文春文庫)

 この作品の著者は中央省庁、日銀、メガバンクを担当したことのある元記者。記者だけあって読み応えのある文章は無駄がなく、わかりやすく臨場感もあります。他社が特ダネを報じて、自社だけが報じることができなかったことを「特落ち」といい、記者にとっては不名誉なこと。

 特ダネを狙う記者たち、謎のリークで記者たちが奔走し、財界や政界の大物たちが動き出し、主人公の記者はメガバンクの巧妙な巨大損失隠しに徐々に近づいていきます。内部の情報をいかに引き出すか、情報源との信頼関係を構築しつつ、さまざまな駆け引きをしながらの取材の日々。マスコミを利用して優位に物事を進めようとする人もいれば、はったりだけだったり、リークで金儲けを企む人やライバルを貶める人...。様々な思惑が絡んで誰が事実を知っているのかを見極めるのも記者の腕なのかもしれません。

 ときにはライバルである他社の記者たちとタッグを組んで、裏付けをとったり、いつもアンテナを張り続けている記者たちの様子に、読んでるこちらも胃がキリキリします。女性記者の活躍も魅力のエンタメ小説です。とにかくおもしろい、そんな一冊でした。

 

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