鈴の本箱

本のこと、あれこれ(覚書)

火の粉

 初めて雫井脩介の作品を読みました。

 書店で平置きされていて人気の一冊となっていて、本書の内容紹介を見ておもしろそうだったので購入。電車の中で読み始めましたが、帰宅してからも先が気になって、その後一気に読んでしまいました。

火の粉 (幻冬舎文庫)

 アマゾンのレビュー数も100を超えているんですね。人気があるのもうなずけます。(以下、ネタバレ有)

 ある一家惨殺事件で起訴された武内に無罪を言い渡した裁判官の梶間。数年後、リタイアして大学の教壇に立つ梶間に武内が現れる。そして梶間家の隣に偶然?武内が引越してきます。このあたりから気持ち悪いモヤモヤした感じが始まります。武内の善意あふれる親切な行動は姑の介護で疲れた梶間の妻の信頼を得ます。まもなく姑が亡くなり、武内の高額な香典に恐縮する妻や浮かれる息子に対して梶間はほとんど無関心。孫娘も手懐け、唯一、息子の嫁だけは武内を警戒しはじめる。一家惨殺事件の遺族も現れ、徐々に武内の本性がわかる。

 親切だけど、なんかちょっと...という感じ。その違和感が徐々に膨らんでいく。過剰な親切はどこか狂気を含んでいて、「私を受け入れてほしい」という心の叫びなのかもしれません。でも相手にはそれが大きな負担であり、それが恐怖に変わり、とうてい受け入れられなくなり拒絶します。拒絶されればされるほど、狂気が牙をむいて止められなくなります。怖いです。

 梶間家の能天気な息子にはイライラさせられ、事なかれの梶間にも腹が立ち、そしてラストシーンはこわすぎて、気分悪くなるほど。小さな火の粉をすぐに払えばよかったものを、ほっといていたら炎が上がっていた..。そんな印象を持ちました。

 見事なサスペンス作品だと思います。

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