春に東京ビッグサイトで行われた「ホビーショー」に出かけたとき、手工芸関連のメーカーがいくつも出展していました。プラモデルの「TAMIYA」、ボンドの「コニシ」、カッターの「オルファ」などなど、馴染みのある製品の企業も多く見られました。企業名は知らないけど製品名は知っているというのは誰でもいくつかあるのではないでしょうか。
会社の代表商品(登録商標)が名詞化されているもの、例えば寺西化学のマジックインキ。学校や職場、魚河岸や市場でも利用されている製品です。
「マジックで書いて」とか「マジック貸して」と会話の中でもよく登場する「マジック」。考えてみれば手品師でも魔法使いでもない限り、マジック(Magic)なんて使えるわけはないのですが、わざわざ説明しなくても「マジック=油性ペン」だとわかっているから会話が成り立つわけです。
大手メーカーも数多くの油性マーカーを出していますが、多くの消費者の心に浸透しているのはやはりこのマジックといえるでしょう。発売から50年以上、ガラス製のずんぐりしたボディはずっと変わらない。
ボールペンやシャープペンなどの数ある筆記用具の中で、あえて油性マーカーの分野にがっちりと食い込み、不動の地位を築く。マインド・シェアを高めた寺西化学はニッチ企業として成功というわけです。
そんなニッチ戦略について書かれている本です。
「ニッチ(niche)って何?」っていうほど経済のことがわかっていない私(ニーシュと読んで笑われた)ですが、わかりやすい解説と国内企業の事例もあって、自分の身の回りにある商品やサービスについて新たな関心を持つことができた一冊です。