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鈴の本箱

本のこと、あれこれ(覚書)

非色

一般文庫

 再読したい本の一冊に有吉佐和子著の『非色』があります。

 1967年に初版された古い作品で差別がテーマになっています。現在でもヘイトスピーチやら数々のハラスメントなど、差別に関する問題がニュースで取り上げられているのをみると、誰の心にも「差別」は潜んでいるものだと思わざる得ません。

非色 (角川文庫)

   戦後の日本人女性が国際結婚したいわゆる「戦争花嫁」の生き様が描かれています。アメリカで差別や偏見によって困難に立ち向かう様子はかなりタフです。当時のアメリカ社会がどんなものだったかが、とてもリアルに感じられます。

 主人公・笑子の夫・トムはアフリカ系アメリカ人。肌の色による差別、そしてコンプレックス...。そして笑子もアメリカに渡れば有色人種のカラードとなり、日本では感じたこともない肌の色の違いを痛感するわけです。さらに、階級、学歴、出身など、あらゆる部分で「差別」され、それは現在でも否定できないでしょう。日本でも多様性(Diversity)が叫ばれていますが、おもむろな差別が形を変え、または細分化して複雑に社会に浸透している気がします。

 アメリカ人との結婚によって裕福な生活を送れると信じていた主人公のような女性は、現在でもいるように思います。アメリカン・ドリームというか、シンデレラ・ストーリーというか...。国際結婚してからセレブ・マダムになった日本人女性がマスコミ取り上げられているのを見ると、どことなく笑子と重なります。

 作品は古いですが、今でも「差別」という問題提起をストレートに投げかけてくれます。有吉氏の筆力が冴える一冊だと思います。

 

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