鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

「東京国際ブックフェア」

 昨日、「東京国際ブックフェア」へ出かけました。基調講演と宝探し的な感覚で読みたい本を見つけたいという目的で毎年出かけているイベントです。

 今年の基調講演は林真理子湊かなえ朝井リョウ茂木健一郎内田樹と多彩。

 今回、林真理子氏の基調講演を申し込んだら、申し込み多数なので9時15分から優先受付するとのメールが届いたので、東京ビッグサイトに9時到着を目指すべく、久しぶりに通勤モードで出かけました。

 予定通り9時についたらすでに列ができていて、優先受付も始まっていました。優先チケットをもらって時計を見たらまだ9時15分。「テープカットにご参加ください」との呼びかけに、出展者でも関係者でもないのに参加していいものかしらと思いつつ、好奇心から足を進めるとハハ〜ン、納得。会場にいる人がちょっと少ない気がします。

 すこ〜しずつ人が集まり始めたあたりで、突然「ラ・バンバ」の演奏が鳴り出し、音源を辿ればそこにはギンギラなお姉さんとバンドの生演奏。

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 朝から景気のよい音楽で、セレモニーを盛り上げたい気持ちはとてもよくわかるんですが、会場にいる人たちは出版業界や書店関連、プレス関係者の人たち、そして私のような読者来訪者たちは平日だからほとんど中高年が多いわけで、そんな人たちがこの音楽にノリノリになっているかというと極めて微妙でして...。

 そしてその音楽にあわせてテープ・カッターの方たちがゾロゾロ....。出版社や大手書店の役員の方たちや大使館の人などが並び、最後に秋篠宮両殿下がお出ましのときもこのノリノリな音楽が続きます。

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  お二人のお出ましによって会場のボルテージというかスマホ撮影が一気に盛り上がった感があります。

 テープカットが終わって、10時からの林真理子氏の基調講演会場へ。

 今回のテーマは「本と生きる −その幸福な時間を貴方にも」。実際、彼女が話してくれたのは、書店の実店舗が今や絶滅危惧種となっていることが中心でした。その背景には図書館の大量貸し出しや、オシャンティーなブック&カフェの出現によって「本はただで読むもの」になっているのではないかと。また、万引きによる転売の実態も深刻で、彼女の実家が書店だったということもあって、町の本屋さんをなんとか救済したいという気持ちを感じました。

 図書館問題については彼女自身が出版編集者とともにいろんな図書館に出かけて話し合いをしたりと、積極的に取り組んでいるようです。ある図書館に警備員が配置されていたので、その理由を尋ねたら開館時間と同時にリタイアしたおじさんたちが日経新聞の奪い合いがあって暴力沙汰になったことがあったとか。「下流老人」を特集したドキュメンタリーを見たときに、テーブルの上に新聞が置いてあったのをみて、この人たちですら少ない収入の中から新聞購読費を捻出しているのに...と思ったそうです。

 私の地元の図書館でも、開館前から玄関で待っている人が数人いて、新聞コーナーにまっしぐらという光景を目にします。でも、図書館の利用を否定できるものではないですし、本や新聞を買おうが買わないが個人の自由ですから、そこまで言及できないわけですし、出版する側としては微妙なところですよね。

 私自身、図書館の利用はめっきり少なくなりました。離職後、節約しようと図書館を利用しましたが、私は速読ができないので返却期日までに読み終えるのが困難であることを痛感しました。それと、ある本を借りたとき、ページ一面にベターッと鼻水&鼻くそがついていて衝撃でした。それがトラウマになっているのか、その後、どの本にも変な汚れがついているのではと思うようになって敬遠してしまいました。

 とはいえ、マーケットプレイスで安くて状態の良い古本があれば、新本よりそちらを選んでしまうし、ブックオフを最初にチェックしてから書店に行くようなこともあります。本はただで読むものとは思っていなくても、どこかで安く買えたらと思っているんですよね。

 講演後、展示会場に向かい、今回はちょっと奮発して3冊購入しました。どれも割引価格でした。ブースを周って気づいたのは空ブースが多いこと。そこは休憩所になっていますが、出展者が少ないとも言えます。以前、独自で出展していた中小規模の出版社が今回、合同ブースの中に入っていて、展示書籍がわずかだったのを見ると、出版業界の厳しさを感じます。

 「honto」のブースにはお笑い芸人ロバート秋山のトークショーがあってプレス関係もあってか賑やかでした。いくつかのブースでこうしたトークショーやサイン会、子供向けの出版コーナーは読み聞かせなどあって、人を集めるための工夫が感じられました。

 一方で、活況があったのは「アニメ」と「漫画」。手塚プロダクションは「アトム」や「ブラックジャック」の書籍やグッズもあって外国人客もいました。

 講談社のブースは「猫本」。「チーズスイートホーム」の猫のチーを中心に猫の本を揃えていました。猫のチー・グッズもあって可愛いんですが、ガチャやプリクラまであるとアミューズメント状態。さすがにちょっと....。今回、私が講談社ブースで期待したのは70周年を迎えた「群像」でしたが、品薄になっている今月号の「群像」すらアニメ化された猫のチーには勝てないのねと思った次第です(笑)。

 来年も無事に開催されますようにと思ったフェアでした。