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鈴の本箱

本のこと、あれこれ(覚書)

リトル・ムーンライト

外国文学・語学 ハーレクイン

ベティ・ニールズの作品、4冊目

『リトル・ムーンライト』、原題も『A Little Moonlight』

リトル・ムーンライト (ハーレクイン・イマージュ)

  ヒロインのサリーナはタイピストとして働いていますが、何かと手間のかかる母親と二人暮らし。臨時の派遣先でマルク医師のもとで働くことになります。このマルク医師もオランダ人の設定で「男爵」でもあり、背が高くてハンサムで...と定番のヒーローでございます(笑)。オランダとイギリスを行ったり来たりという設定で、彼の秘書が退職するので、臨時で働いているサリーナに一緒にオランダに同行してほしいという展開は、『とっておきのキス』と似ています。

 ただ、ヒロインの母親というのが、いわゆる「毒母」なんですよね。

友達はいたけれど、楽しい遊びやパーティはいつもそばを通り抜けていった。原因のほとんどが母にあったと言ってもいいだろう。母にはそんなつもりはなかったのだろうが、悲しげな顔で、お母さんの頭痛なんか気にしなくていいから楽しんでいらっしゃいとか、一人っきりの夜など平気だとか言ってけなげにほほえんでみせるだけで、娘には絶大な効果を及ぼす。それがもう何年も続いている。

 サリーナの時間は見えない束縛によって自由とともに奪われていたようです。

そんな生活でも、夢見るのだけは自由だった。実現不可能な夢だと、わかってはいたけれど…。ある日ハンサムな男性が現れて、私は恋に落ち、結婚する。

  サリーナもハーレクイン読者だったんでしょうかね(笑)。

 ともあれ、オランダへの出張に関して、サリーナはマルク医師に母親のことを話すと、母親も一緒に連れていけばいいということになり、彼は下宿屋を紹介します。母親は最初は文句を言っていた下宿ですが、そこで下宿していたイギリス人男性ハーディング氏と親しくなり、やがて再婚することになります。

 ところが、母親は再婚を機に、今住んでいる家を売り払ったお金でサリーナにフラットを買ってあげると言ったのもつかの間、「あら、そんなこと言ったかしら」のすっとぼけ状態。さらに再婚相手のハーディング氏が住まいの世話をしようと提案したのに、「独立心の強い娘だから自分のサラリーで借りた方がいいのよ」と言いくるめてしまう毒母ぶり。そして結局、娘には何も残さずさっさと嫁いでしまう母親でした。嫁いだ年のクリスマスも自分たちは旅行に出かけ、サリーナは一人で過ごすところを、運良く疎遠だった父方の伯母と連絡がとれ、そこでクリスマスを過ごせることになったのです。

 これでは、サリーナも愚痴っぽくもなります。マルクは彼女の様子がおかしいことに気づきます。聞いたところで答えないことはわかっていたので、こっそり自宅の様子を訪ねてみると母親が再婚し、その家が売却され、サリーナが引っ越したことを知ります。そしてあれこれ聞き訪ねて彼女の引っ越し先を見つけます。

 一歩間違えるとストーカー扱いされそうですが、サリーナを心配するマルクとそんな彼が気になり始めているサリーナという状態ですから、こういう場合は困ったときに現れる王子様といったところでしょうか(笑)

 仕事をしている二人はどことなく、ピリピリした感じもあるのですが、仕事を離れたマルクの優しさがトゲトゲしたサリーナの心を癒しているような感じです。

 男爵の生まれであるマルク、そして彼の母親がとても理解のある方で、「感じのいい娘さんだわ。彼女ならぴったりね」とサリーナを好意的に受け取めています。あの毒母や、仕事中のサリーナの愚痴を聞いたら...男爵夫人も考え直しそうですけど、ここはロマンス、夢の国ってことで(笑)。

 看護師経験がある著者のベディは、患者さんの中にサリーナのような毒母と娘を見たのかもしれませんね。母親のセリフやセリーナが不満を口に出せずに母親のために働く姿はリアルに描かれています。二人の恋愛プロセスはあまり胸キュンのところが感じられなくて、サリーナの母親の毒母ぶりが際立った作品でした。