鈴の本箱

本のこと、あれこれ(覚書)

他人を支配したがる人たち

 どんな場所でもやっかいな人はいるものですが、つい最近まで、近所の年配女性(以下、Aさん)にかなり悩まされました。なんとか対策はないだろうかと、手にとったのがこの一冊。

『他人を支配したがる人たち』ジョージ・サイモン著 秋山勝訳  

文庫 他人を支配したがる人たち (草思社文庫)

 原題は『In sheeps Clothing』

 聖書の一節、”A wolf in sheeps clothing”「偽預言者を警戒しなさい。彼らは羊の皮を身にまとってあなたがたのところに来るが、その内側は貪欲な狼である」からです。

 ここでは「偽預言者(A wolf)」=「潜在的攻撃性パーソナリティ(マニピュレーター)」となるわけですね。

 本書は様々な事例に沿って、マニピュレーターとその被害者の関係が解説してあります。詳細ゆえに重要なポイントが重複したり前後したりでまとめにくいのですが、覚書として記したいと思います。


 ここでは3つの目的を挙げています。

  1.  潜在的攻撃性パーソナリティ(マニピュレーター)の特質、パーソナリティ障害全般についての理解
  2.  潜在的攻撃性の持ち主がどのように人を操るか、ターゲットになりやすい人たちの性格的な特徴
  3.  対処法

 まず、基本となる攻撃行動とはなにか。

  • 健全な攻撃行動
    目的の実現に向けて、正々堂々と競う。ライバルに負けないために自己鍛錬に励むというポジティブな方向にエネルギーが注がれる。本能的な衝動を抑制でき、自らの行為をその意味に照らし合わせて調整できる。自分の攻撃的性質を社会的なルールに準じてコントロールできる。
  • マニピュレーターの攻撃行動
    「勝つ」ことだけに執着する。手段を選ばず、しかしその意図を隠しながら影に回って人を欺くこと、足を引っ張ることにひたすらエネルギーが向く。「勝つ」ための努力より、いかに相手を「負け」に導くかに軸足を置いているとも言えます。

 彼らの対人関係における4つの視点

  1. 自分が勝ち、相手が負ける→もっとも望ましい展開
  2. 自分が負け、相手が勝つ→断じて許し難い展開で、相手の勝利を何としても阻止したい
  3. 双方とも負け→敗北が許せないので、道連れにするために相手を巻き込む。
  4. 双方とも勝ち→1に比べて最上の結果ではないが、次善の選択して受け入れられることがある。

 子供の頃から好戦的な傾向がある場合、自制力を学ばせる必要があり、人と争う行為の意味をきちんと教えておくことが重要であるということです。

  • どのような場合に人と闘い、どのような場合にそれが不適切な争いになるのか
  • 闘うことに代わる方法の利点を説き、代替案とは何かを説明する
  • 「強引に自分の考えを押し通す(aggressive)」ことと「明確な自己主張(assertive)」の違いを理解させる

 マニピュレーターはこうした自制心や抑制力が欠落しているということでしょう。

 彼らがどのように人を操るのか、 ターゲットになりやすい人はどのような人なのかは、『自分のついた嘘を真実だと思い込む人』の内容と重なる部分がありました。

mtwood.hatenablog.com

  本書を読みながら、自分が学校や職場などでこうした相手から攻撃を受け、対峙したときと照らし合わせると本書の対処法は説得力があります。

 特に攻撃の兆候が出てきたときの初期対応は重要だと思います。誠意が伝わらない相手に誠意を見せる必要はないし、意味のない競争をけしかけられても相手にすることはない。そうとわかっていても、ときには動揺したり良心がとがめて、初期対応にためらっている隙を突かれてしまい、幾度か悔しい経験をしたことがあります。そんな人たちに振り回されないためにも、自分の行動パターンを把握し、防衛力をあげていきたいと改めて感じた一冊になりました。

 

  さて、この本を読むきっかけになったAさんは元教師で現在は80歳近いご高齢。ご主人は専業主夫で、小、中学校のPTA会長、その後民生委員でした。二人の息子のうち次男が私と同級生。生徒や地域住民の家庭事情を知ることができ、プライベートな部分に立ち入ることが可能だったご主人でしたから、夫婦間で守秘義務がどれだけ守られたかは疑わしい気がします。社交的なご主人とは反対にAさんは地元の老人会、地域の活動等には全く参加していません。ご主人が亡くなって情報が入らないことが不安なのかもしれません。ご近所さんの動静にやたら敏感で、ロックオンされたターゲットはたまりません。

 母の入院を知ったか知らずか、会うたびに「お母さんはお元気?」と聞かれ、同じ質問を繰り返すので、認知を疑ったものの、どこか意図的な感じがあったので無視を決めました。するとやたらと私の出かける先々にAさんが現れるのです。老人会の方たちと話しているとき、スーパーやモールの出入口、早朝のリサイクル当番、ゴミ出しの時間をいろいろずらしても必ず現れ「お母さんはお元気?」。そんな日が何日も続いたある日、モールを出た先の交差点近くで現れ、避けようとした私のカバンを引っ張ろうと手を出したので、身をかわしたら「あら、嫌?」と一言。ようやく私が拒否していることをわかってくれたかと思ったら、翌日、近所のBさんを使って聞き出す始末。留守電メッセージの後ろでかすかに「いない?留守?」とAさんのささやき声。ここまでの執拗さに気持ち悪くなってしまいました。母の退院後も続き、頻繁に外出するようになってからその行為がおさまりました。

 本書を参考に考えてみると、自分の欲する要求に私が応じないことが彼女にとって「負け」なのかもしれません。負けたくないから、執拗に聞く、偶然を装って至る所で現れるのは、不意打ちをかけたりして、とにかくこちらが根負けするまでひたすら攻めていたということになります。Bさんを巻き込むのも手法の一つでしょう。

 本書の指摘通り「マニピュレーターは変わらない」。いくつになっても変わらないことを自分の意識に叩き込むことが大事ですね。