鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

Christmas Stories 2017 愛が輝く聖夜

 ハロウィンが終わってクリスマス商戦。ハーレクインも然り。

 クリスマス・シーズンをベースにしたロマンス4作品をまとめた一冊。毎年季刊で出ていたらしく、今年初めて読んでみました。こういった特集ものは読んだことのない作家と出会えるのも楽しみです。

クリスマス・ストーリー2017 愛が輝く聖夜

 (以下ネタバレ)

<億万長者の魔法の一夜> サラ・モーガン

  ニューヨークで暮らすマチルダは小説家志望で、大企業の経営者チェイス主催のセレブなパーティでパーティ・コンパニオンをしていますが、不器用な彼女はグラスをひっくり返す大失態を演じてその場で解雇。一方、チェイスは退屈なパーティを抜け出し、エレベーターでマチルダと鉢合わせになります。互いに素性を明かさず、マチルダは自分が描いた理想の女性になろうとし、チェイスは本来の自分になろうとし、互いに素性を明かさないままお互い惹かれあっていくというストーリー。

 マチルダが創り上げた小説の主人公ララは自分にとって理想の女性。内気で不器用な性格をなんとか変えたかった彼女が、主人公ララになりきって大胆でホットな女性になるあたり、普段おとなしい女の子が何かのはずみではじけちゃう、そんな感じでした。

 パーティの仕事を選んだのはチェイスが目的ではなく、彼の弟が経営する出版社に自分の作品を見てもらいたかったためですが、行きずりの関係で終わってもおかしくない出会いなのに、チェイスが弟に原稿を渡してくれるような展開になったのはあり得ない、いや、ラッキーでした。というか、それが「魔法」なのかもしれません(笑)。

 時折見せる彼女の素朴な部分に気づきながらもチェイスは惹かれていき、彼自身も彼女の前では素顔でいられることを自覚します。やがて正体がわかったあとも正直な気持ちを打ち明けるシーンはありのままの二人が感じられてよかったです。

 ただ、パーティ会場で一緒だったチェイスの彼女ヴィクトリアが、後半まったく出てきません。セレブなヴィクトリアとは割り切った関係だったとしても、チェイスがセレブでもないマチルダに関心があることを黙って見ているとは思えないのですが、そのあたりはなんなくスルー(笑)

 

<ある伯爵とシンデレラの物語> アニー・バロウズ

  両親を亡くしたアリスは身を寄せた伯父の屋敷でメイドのような扱いをされています。伯父一家が泊まりがけで外出した吹雪の夜、伯爵のジャックと幼い子供が吹雪から逃れる場所を求めて屋敷にたどり着きます。妻に先立たれた彼は子供を妻の実家から引き取ってきたばかりで、子供たちの向き合い方に少しとまどっている様子。ジャックがロートン伯爵だと知らずアリスは使用人二人とともに質素ながらできるだけのもてなしをします。ジャックも粗末な身なりをしているアリスをメイドだと思っていますが、互いに少しずつ距離が縮まってハッピーエンドというシンデレラ・ストーリー。

  退役したばかりで、まだ慣れない伯爵の務めを担ったジャックは子供との関係をこれからどう深めていけばよいのか悩んでいて、どこか精神的に張り詰めていたところがあります。アリスに衝動的にキスをした後も自問自答して心のブレーキをかけてるあたりは、堅気な感じがします。

 妻の実家でさんざん父親の悪口を聞かされて育った子供たちがアリスの屋敷でみんなと過ごしていくうちに心を開き、父親ジャックとの距離が縮まっていく様子は温かみのある展開になっていてクリスマスらしさを感じさせます。

 

<ダイヤモンド・クリスマス> ジョス・ウッド 

 ライリーの上司ジェームズは、原石の発掘から高級宝石店までダイヤモンドのすべてを扱う会社のCEO。幼馴染でもある二人ですが、ベッドをともにするも彼は真剣に付き合う気がなく、ライリーはこのままダラダラ過ごしても彼の気持ちが得られないなら、仕事を辞めて彼から離れようと決意します。ところが、ジェームズは辞表を受け取らず仕事に託けてなにかと彼女を引き留めては喧嘩ばかりですが、やがて互いに理解しあってハッピーエンド。

 ライリーはジュエリーデザイナーで自立した女性かと思いきや、ジェームズに対して自分の気持ちを打ち明けずイライラしたり、ある日友達感覚でジェームズと遊びに出かけたりもして気持ちが揺れ動いているというか、面倒くさいというか(笑)。

 ジェームズも体の関係を求めながらいいムードになると「お前に興味ないよ」的な態度や何気ない言葉でライリーを傷つけるという、二人ともなんか子供っぽく映りました。ライリーの親友でありジェームズの妹が間を取り持った感じで無事ハッピーエンド。プロポーズはゴージャスなサプライズですが、あまり感動できなくて「はいはい、よかったね」という感想です(笑)

 

<天使を守りたくて> レベッカ・ウィンター

 アンドレアは生後3カ月の赤ん坊と一緒に、雪の降るなか車を走らせ事故に遭ってしまいます。病院で目覚めたとき、そばにいたのはフリンという頼もしいテキサス・レンジャー(野球チームじゃなくて...(笑))。退院許可が出るやいなや、DV夫から逃れていたアンドレアは息子と共に彼の家で保護されることになります。一緒に過ごすうちにお互いに愛情が芽生えていくというストーリー。

  冒頭サスペンスな雰囲気があり、スリリングなところもあって一気に引き込まれました。テキサス・レンジャーのフリンが仕事柄、強い正義感のマッチョなイメージを持ちましたが、仕事とは別に彼自身の中にある正義感や包容力が感じられて読んでいても安心感があります。

 不運な飛行機事故で最愛の妻子をなくした彼ですが、アンドレアに出会い、そして惹かれはじめても、決して自分の気持ちを押し付けず、相手の気持ちを尊重するところが魅力的です。アンドレアは不幸な結婚生活から逃れ自立の道を模索し始めていますが、彼のやさしさに依存することなく、一定の距離を保ち、ケガをしたフリンを支えていく姿も好感が持てます。それぞれ辛い経験を乗り越えて出会った大人のロマンスでした。

 さて、私が今まで読んできたハーレクインのヒーローの職業は、貴族や会社経営社長、そしてドクター。今回初めて「テキサス・レンジャー」なるお仕事のヒーローを知ったわけですが、こうした「ウェスタン・ロマンス」も人気があるようです。

Harlequin Western Romance December 2017 Box Set: A Baby for Christmas\Texas Rebels: Elias\Roping Her Christmas Cowboy\Montana Mistletoe Baby

 とはいえ、テキサス・レンジャーと言われてもピンとこない(笑)

 ウィキペディアによれば

テキサス・レンジャー( The Texas Ranger)は、テキサス州公安局に属する法執行官。

 日本だと刑事とか警察官あたり?いや、もう少しローカル色が強いのかな?

 なんとなく古い西部劇のイメージしかなくて、作品を読んでるときも車に乗ったヒーローがなかなかなじめず、動画でちょっとお勉強。

  「炎のテキサス・レンジャー」(原題:WALKER, TEXAS RANGER) 

youtu.be

 モロ合成な青空バックにたたずむテキサス・レンジャー。現代は車も馬もどちらも乗りこなせるレンジャーのようです。

 ラブシーンはハーレクインっぽさがあります。

youtu.be

 ただ、ファイト・シーンが....。効果音ほど回し蹴りやパンチに迫力が感じられないのは気のせいですかね(笑)

 

youtu.be

  この動画では、ショッピング・モール内でバイク爆走(フロアまでどうやってきたのやら...)、拳銃発砲、だけど買い物客は逃げることなく周りを囲んで見物...

 小説のヒーローは実写より脳内の想像に任せたほうがよさそうです(笑)