移動時間に完読できた一冊。
『愛のいけにえ』アン・ハンプソン 著(平 敦子 訳)
ハーレクインは文庫も出している。新書サイズ(下)より文庫版(上)の表紙の方が持ち歩くのには小っ恥ずかしさはないかもしれない(笑)とはいえ、どちらにしてもハーレクインはついカバーをかけてしまう。
辛い失恋後、離れた環境で2年過ごした主人公テッサ。しかし、ポールに対して吹っ切れていないことが、姉が彼を捨てたことによって浮き彫りになり、さらに彼の置かれた状況にテッサの思いが一層膨らみ、彼女の痛々しい一途さは読んでいて少し引いてしまう。
ポールは失明し、姉に捨てられ、失意のどん底。そんな彼のテッサに対する態度に、読んでる方はハラハラドキドキ。姉のふりをしているテッサに気づいているのか、いないのか、激しいポールの感情に揺さぶられては、テッサはオロオロ。そのあたりはちょっとサスペンスっぽい感じもあり。
ストーリーの舞台となるキプロス島の描写は、目の見えないポールに状況説明するテッサの言葉で美しく語られ、ギリシャ人の気質や慣習なども盛り込まれて、そのあたりも楽しめた一冊。