鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

理科系の読書術

 「本を読むのが苦行ですーーー」の帯にひかれて購入した一冊。

 『理科系の読書術 インプットからアウトプットまでの28のヒント』鎌田浩毅著 

理科系の読書術 - インプットからアウトプットまでの28のヒント (中公新書)

 読書術なる書籍はいくつか読んだが、本書はとてもわかりやすく読みやすい構成で、目次から読みたいところだけ拾い読みしても十分理解できると思う。

 帯に書いてある京大生は本当に本を読むのが苦手なんだろうかと思いながら読み始めた。読書に対する苦手意識は「心のバリア」にあると著者は指摘する。

 苦手な理由として
  1. 億劫で読み始められない
  2. 最後まで読み切れない
  3. 読む時間がない
  4. ビジネス書と小説の読み方がわからない
  5. 読書がなぜ必要なのかわからない

 苦行にしない対策として、楽しく読むには読書の目的や必要性を明確化すること。「必要性の明確化」は、必要な部分を最初に満たすことによってある程度の達成感と満足感が得られ、読書の楽しさを少しずつ感じられるようになるという。

 著者が指摘した読了できない理由として、

途中で投げ出す→嫌な思い出(挫折感、劣等感)→苦手がさらに苦手になる。

  読了できない劣等感は確かにある。そんな私のような読者に著者はこんな言葉で励ましてくれる。

 本を読み始めてみたものの、難しくて何が何だかわからない、という経験はないだろうか。これに対して私は特効薬を持っている。それは「難しい本は著者が悪い」と考えるのである。

 読書は我慢大会ではない。世の中には、根くらべのために書かれたとしか思えないような、わかりにく本がある。そんなバカげた本は、さっさと放り出すべきだ。

 本を読んでいてわからないことに出会ったとき、自分の頭が悪いからだと考える人が多いが、その必要はない。著者の説明の仕方が悪いのではないかと疑ってみることが重要である。事実、説明が不十分なのは著者の頭が悪いからであり、自分の頭が悪いせいではないということが多々ある。

自分に合ったわかりやすい本に出会うまで、本はどんどん取り替えてよいのである。

  難解な比喩が全くわからずハルキストになれないと思ったとき、読解力のなさに落ち込んだが、「そんな風に思わなくていいんだよ。だいたい沈黙が聞こえるとか、んなわけのわかんない文章を理解するほうが無理だって」と言ってくれてるよう(笑)

 小説や文学作品のような連続性があり時間を要する本は、最初から最後までじっくり読まないと意味をなさないので「音楽的読書」向き。つまり、音楽のサビの部分を聞いても作品全体は理解できないというもの。ウォームアップ的活用として、例えば長編の『戦争と平和』や『失われた時を求めて』は概要と読みどころをまとめた「あらすじ」本や『100分de名著』を活用してもよいし、漫画でもよい。

 一方、図鑑、ハウツーもの、新書やビジネス関連は、細切れの時間(不連続の時間)でも情報を得られ「絵画的読書」向き。美術館に展示されている絵画はどれから見てもよいのと同じで、つまみ読みしても欲しい情報は得られる。濫読には大きな意味があると著者は言う。

 第6章のメモの取り方で、クロスレファレンスの手法が紹介されている。法律事務所いたときに大量の書類ファイルの中から、目的に合致した情報をすぐに引用できるように抽出するために、ポストイットとフラッグを付けまくったことがある。読書でもそれが応用できるのだろう。システムは自ら構築していき、読書メモと本を一体化するもよし、他の本への橋渡しとしてするもよし、である。

 本書のユニークな内容によって、自分の中の読書に対するネガティブな部分が解消できた一冊となった。