鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

儚い愛人契約

ハーレクイン・ロマンス 初めて読む作家の作品です。

『儚い愛人契約』キャロル・マリネッリ

儚い愛人契約 (ハーレクイン・ロマンス)

 原題は『Bound by the sultan baby』。だいたい内容が想像できるタイトルですね。

 (以下ネタバレ)

 ヒロインは24歳のイタリア人のガブリエル、通称ガビ(「カビ」と読み間違えてしまいました(笑))。ウェディング・プランナーで清らかなヴァージンでございます。 彼女の母カルメルは未婚の母。つまり、ガビは父親が誰だか知らないという生い立ちの設定です。

 ヒーローのアリムは、ローマの名門ホテルのオーナーであり、中東の架空の国「ゼスレハン国」のスルタン(皇太子)。父オーマンはイギリス人の愛人フラーとの間に息子ジェイムスがいて、スルタンの異母兄になります。そしてディクダット(DIKTAT)という絶対的命令という掟があります。

 ジェイムスの結婚が決まり、アリムのホテルで式が執り行われることになり、そのウェディング・プランナーとしてガビが関わるところからストーリーが始まります。

 (以下ネタバレ)

 ホテルのオーナー、アリムに恋しているガビが、一晩限りの関係を結びます。異母兄の結婚式を終えて、アリムがガビに労をねぎらうあたりまではビジネスライクでしたが、いつもは地味なスーツなガビがドレスアップした姿にムラムラしたアリムと、憧れの彼とロマンチックな式場の雰囲気の中でツーショットになれてすっかり浮かれたガビはベッドへまっしぐら。

 従業員の目を気にして、先にアリムが部屋に行き、あとからガビが行くのですが、先についたアリムが廊下で待ち構えて火が付き始めてしまいます。そしてめくるめく官能のシーンが描かれているわけですが、初体験とは思えないガビのはじけっぷりはロマンスというより週刊実話といった感じ(笑)

 欲望に負けて避妊をしなかったアリムが、夜が明けたら医者を呼んで診てもらおうとの申し出に、自分でなんとかするわと断るガビ。その後、ピロートークで身の上話をし、ぐっすり眠った後...

「最高の一夜だったわ」ガビが言う。本当にそうだった。そしてアリムは何よりもこの言葉を聞きたかった。微笑みを浮かべて彼を見つめるガビの顔には後悔や戸惑いはかけらもみられない。あるのは欲望だけだ。アリムも同じだった。

  ガビはヴァージンだっけ?と思うほど慣れたベッドのふるまいにドキドキ感はゼロ。そしてアリムはベッドの中で自分がスルタンであることを告白します。そして愛人にならないかいうわけです。彼女の仕事についても独立を応援するというのも含めての提案です。

 身分が違うガビに愛人の申し出は、彼の国、そして彼の立場から考えてみれば妥当なのかもしれません。彼の父親もイギリス人の愛人がいるし、母親もそれを認めているという状況なので、悪いことだとは思っていないわけです。ただ愛人ですから妊娠は認められない。

 そんな矢先にアリムは父親から「婚前のディクタット」を命ぜられます。健康不安がある父親はアリムに早く身を固めて後をついでほしいため、すでに長老たちに準備を進めるよう指示したのです。

 将来の花嫁に恥をかかせないため、アリムはこの瞬間から禁欲生活に入ります。その後ガビに申し出はなかったことにしてくれと言い、アフターピルついても念を押されたガビはアリムとの関係は終わったと思うのです。

 アリムは祖国へ帰り、結局、ガビは何の対処もせず、やがて妊娠発覚。アリムには内緒で生み育ててシングルマザーとなり、母親と同じ境遇となります。対処をしなかったのは無知だったからなのか、純粋にアリムの子どもがほしかったのか、それとも強かな玉の輿計画が潜んでいるのか....。どちらにしてもこのヒロインは好きになれない。

 その後、すんごく物分かりのよいアリムの母親がディクタット中でも電話はOKとか言って、アリムがガビの職場に電話するとガビが産休中と聞いて子供の存在を知ります。そのあと、飛行機を飛ばしてガビをアリムの側近が迎えに行き、砂漠のど真ん中に彼女を置き去りにするという無茶ぶり。そして砂が舞い上がる中、アリムが現れ、砂漠に建てられたテントの中へと連れていきます。

 遊牧民のテントとちがってゴージャスなテントの壁は赤いベルベッドが張られ、ふかふかの絨毯、天井にはいくつものペンダントライト、部屋の真ん中に巨大なベッド、奥の衝立の向こうには、砂漠から温泉を引いているというお風呂に香油入り。ゴージャスなはずなのに、私の脳内はなぜか砂漠のど真ん中にあるラブホのイメージしか浮かんでこない(笑)

 ともかく、子供のことや今後のことを話し合うために砂漠で再会したのに、話もそこそこにめくるめく官能の世界アゲインとなってしまい、最終的にはガビは「妻ならいいけど愛人はいや」とローマに帰ります。

 で、アリムは父親になんだかんだと訴えて結局、ガビとの結婚を許してもらい、ラストはサプライズ的な段取りでハッピーエンド。

 二人の会話のほとんどがピロートークなので、アリムとの身体の相性がよかっただけという感がぬぐえません。一国の皇太子の嫁探しはどこの国だって一大事でしょうに、何のためのディクタットやら....。ガビが皇太子妃としてふさわしいかどうかは定かではありませんが、もう少し精神的な結びつきがほしかったです。

 あまり中東のプリンスには興味がなく濃い顔のイメージしかなくて、つい先日NHKの番組でドバイのハムダン皇太子を見たとき、アリムもこういうイメージなのかなと...。アクティブというかバブリーというか、人柄が見えてこないのがちょっと残念。


ドバイ首長国のハムダーン皇太子の私生活がアクティブ過ぎるwwwww