鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

医療費以外の出費と節約

 スーパーの雑誌売り場を眺めていたら、「婦人公論」の特集記事にひかれて買ってみた。

 不安は減らせる!「限られた年金で満足して暮らす」

 あと数年で受給年齢だが、物価上昇と反比例の収入になるので、参考にしたかった。

 〈「月5万円生活」が教えてくれた〉お金で買えない幸せは、無限大だから

の題目で、経済評論家とユーチューバーの対談。精神面な話が多い印象だったかな。以前はブランド物だけど、今は古着屋さんだとか、ベランダで家庭菜園で新鮮なハーブを育ててるとか…。

 ハーブより、ナスやプチトマト、キュウリの方が実用的だと思ってしまう私には、こういった内容はちょっとキラキラしていて物足りなかった。

 

 読者アンケートで節約下手の家計簿拝見があった。ファイナンシャルプランナーがそれぞれの家計簿にアドバイスする。

 わりとよく聞くのは、「民間企業の医療保険の見直しをしましょう。特約などが加わると掛け金も高く、毎月の支出も増えますので、そこは節約のポイントです。医療保険は最低のもの、または入らなくても、病気になったときは、高額医療制度を使えばいいんですよ~」といった内容だ。

 高額医療制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額は免除してくれるというもの。母も私もこの制度は利用している。手術や精密検査、高額な薬の処方などの医療費がかさむときはありがたい制度である。

 しかしながら、母の例をとれば、骨折入院、心不全・腎不全の悪化による入院は、手術はなく、後期高齢者で1割負担もあって、医療費そのものはそんなにかからなかった。

 むしろ、リネン代(パジャマやタオル)やおむつ代などの費用が大きい。母は使わなかったが、レンタル・テレビやテレビ・カード、差額ベットの部屋の場合はテレビが使えるかもしれないが、差額代がある。例え、その部屋を希望しなくても体調変化によっては個室に入れられることもあったので、想定外の出費となる。

入院費を心配する患者のイラスト(女性)

 それならパジャマ、タオルやおむつは持ち込めば、その分節約できるかと言えば、微妙なところである。

 母は去年と今年で4つの異なる病院に入院した。去年の2つの病院はリネンとおむつは病院指定ですと言われたので、着替えを持っていく必要はなかった。

 今年、市立病院ではリネンは頼んだが、おむつは他より一番値段が高かったため、それと家に山ほど残っているので持ち込むことにした。ところが、このタイプはだめとかダメ出しがあって、指示されたものをネット通販で安いものを買ったが、看護師によっては使ってもらえなかったものもあって、どっさり残ってしまった。

 ある日、面会時にナースセンターの前で待っていたとき、リネンを頼まずにパジャマの着替えを持ってきた中年女性がきた。かなり疲弊された様子だった。しばらくして看護師が汚れたパジャマと下着らしきものを突っ込んだ(と言う表現しか思いつかない)青いビニール袋を持って、「便がかなりついてるとおもうので、気を付けてお洗濯してくださいね」といって渡した。女性は洗濯した着替えを看護師に渡して、深く頭をさげて帰っていった。

 その女性のとぼとぼと歩く後ろ姿をみながら(この病院は便ごとまるめて返すんだよなぁ)と心でつぶやきながら、母が80代のときに骨折入院したときのことを思い出した。当時はリネン・サービスがなかったので、パジャマ持参だったが、袖口がせまいだの、揺るいだのきついだのとあれこれ言われて、何枚も買うことになり、今も母の整理ダンスにパジャマだけの引き出しがある。

 そしてある日、着替えを持っていったら、「今日、お母さんは間に合わなくて粗相してしまったので、お洗濯よろしくお願いします」と渡されたとき、妙に匂った。家に帰って風呂場で慎重に袋からだしたら、便がそのまま入っていた。あのままうっかり洗濯機に入れたらとんでもないことになっていた。だから、今回はリネンを申し込んだのである。

 リネンは1日いくらと病院によって値段は様々。1日単位の請求ということは、毎日パジャマを着替えるということになる。私が検査入院したときも3日で3枚+検査用病衣&タオルと毎日配られた。

 ところが、母の場合、二つの病院で毎日の着替えがなかった。面会したとき、昼食でみそ汁をこぼしてしまい、ズボンが汚れていた。ところが明日までがまんと言われたらしい。なんとなく怪しい感じがしたので、翌日も面会に行ったら、やけに時間がかかった。ようやく面会できたとき、「急に着替えをするっていうから、待たせてわるかったね」と母が言った。つまり、私が面会に行かなければ着替えなし?と思ってしまう。そんな経験をすると、リネンを頼むのを躊躇するが、持ち込みもまた苦労でどちらも出費は免れない。

 こういった治療費以外の経費について触れているアドバイスはあまり見たことがない。おそらく、若い世代のファイナンシャルプランナーは親もまだ若いので、こういった実情をまだ経験していないのだろう。この雑誌で答えているファイナンシャルプランナーも30代半ばぐらいのきれいな女性である。

 治療費以外の経費をカバーするとしたら、民間の医療保険かもしれない。ただ、医療保険の多くは85歳で終わり。90代の母が唯一加入しているのはケガの傷害保険。一時金払いなので、骨折の部位によっていくら、手術のときはいくら、と決まっている。母が過去、3回ほど骨折で入院したときは、この保険でリネンやおむつ代がカバーできた。

 結局、介護や看護の費用の情報は実体験者の話が参考になっている。ブログで介護や看護に関する記事を読むと、共感することも多いし、自治体によってサービスが違うことにも気づく。

 雑誌が売れないのもなんとなくわかる気がした『婦人公論2024年10月号』だった。