鈴の本箱

本のこと、あれこれ(覚書)

秘書は秘密の恋人

ハーレクインの独身富豪クラブシリーズの第2弾

『秘書は秘密の恋人』画:藤木和子 原作:ミランダ・リー 

秘書は秘密の恋人 独身富豪クラブ ? (ハーレクインコミックス)

 「独身クラブ」のメンバー、一人目は『億万長者の冷たい誘惑』 のセルジオ。今回は二人目となるアレックスとなります。

 セルジオとジェレミーとで創業したワインパブが大成功し、その事業を売却し富豪となったアレックスはシドニーに戻って「アーク不動産」を経営しています。そこで彼の秘書として働いているのが今回のヒロイン、ハリエット。婚約者ドウェインとの婚約破棄によって上司のアレックスとの関係が変わってしまいそうだと心配するシーンから始まります。

 ハーレクインで、雇用関係の恋愛ものがセクハラやパワハラにならないのは、「主人公の二人が潜在的に惹かれあっている」という大前提があるからなんですよね。

 この作品を読みながらふと思い出したことがあります。以前の職場で、ブレイク・ルームで誰かが寄贈したハーレクイン小説(英語版)でオフィス・ラブの作品を興味津々で読んでいた20代の日本人男性スタッフが、「なんだかなあ。仕事とプライベートは別とか言っても、女も結局、男目当てで仕事して、誘われればまんざらでもないってことだよな」と茶化したら、アメリカ人女性スタッフたちが呆れ顔で「わかってないわね〜、そのヒーローだから成り立つんじゃないの。」と容赦ない(笑)。「背が高くてハンサムで、高学歴で、エグゼだかCEOとか、イケメンのベンチャー企業の社長レベルだろう?」とムキになると、ビッグ・ママことジャマイカ人の女性上司が「あんたは大事なところ読み飛ばしたでしょ。ヒーローの身のこなし、会話、表情、そういうところを読まなきゃだめよ。あんたが一番学ぶべきところでしょうが!全てを兼ね備えた男性と魅力的な女性が無意識に惹かれあっているというのがベースになってんのよ。そこらのエグゼ男なんかじゃだめだめ、がはははは」と豪快に笑い飛ばしていたのを思い出します。

 この作品でもアレックスがハリエットを秘書の採用面接の段階ですでに惹かれていたわけですが、ハリエットを女性として意識せずに仕事ができたのは彼女に婚約者がいたからです。

 面接当時、ハリエットを見たアレックスは疑わしげな表情で彼女を眺めたことを、「私に言い寄られるかもしれないと用心していたのだろう」と彼女は解釈します。婚約者がいると知ったとたん、彼の態度が変化し採用になったので、その解釈が正しかったと確信したのです。

 アレックスは母親が病死した後、父親が立ち直れずアルコール依存症になったのを見て、女性を深く愛することをためらうというか、避けています。しょっちゅう入れ替わるガールフレンドは決して真剣にならない相手。ところが、ハリエットの婚約破棄を聞いて、涙を流すハリエットをなだめているうちに、彼はハリエットに対して秘書としてではなく、女性としての興味を持ちはじめてしまいます。

 ある日、出張に同行したハリエットはアレックスとともに視察したリゾート地の丘陵地で突然キスをされます。衝動的だったアレックスは抑えきれなかった自分に腹を立て、責めるハリエットに対しても「君も僕を求めているだろう」と指摘します。このあたりから二人の駆け引きがはじまります。ハリエットは、男女の仲になった秘書を何人もみてきたけれど、一人としてキャリアの頂点を極められた人はいないことを知っているし、ドウェインの婚約破棄で男性に振り回されるのは懲りていたので、アレックスと快楽だけの関係を結ぶのは大きなリスク。しかし、アレックスの魅力も捨て難いわけで、結局ルールを決めた割り切った関係を結んだ二人。それはそれはお熱いわけで、シャロン・ストーンが演じたようなシーンの描写が続きます。

  そんな関係に変化が出たのは、セルジオの結婚でイタリアに出かけたときのこと。アレックスはセルジオの結婚式にハリエットを同行させたのです。セルジオからは、人の結婚式をお忍び旅行の口実にされたと責められ、ジェレミーも割り切った関係だと答えるアレックスに半信半疑。そんな彼らにおかまいなく、イタリアでも官能の世界に浸る二人。行為を終えてバスルームに入ったアレックスは愕然と戻ってハリエットにこう告げます。

こんなことは言いたくなかったが......。避妊具が破れていた

 二人ともショック!妊娠するかもしれないという事実がのしかかったことで、ハリエットはアレックスを愛してしまったことを自覚し、妊娠しようがしまいがこれ以上彼のそばにいられないと決意します。

 アレックスはハリエットが望んでいない妊娠だと思い、「アフター・ピルを買いにいけば心配なくなる」と言いますが、ハリエットはその言葉にアレックスとの将来はないことを悟ります。その後予定していたヴェネチアはキャンセルし、二人はシドニーへ帰ります。

 帰国後の二週間半、アレックスは悶々とした日を過ごします。そしてハリエットが彼のオフィスを訪れ、「妊娠はしていなかったわ、だけどもう続けられない、仕事も辞めます、さようなら」と去っていきます。

 「やれやれ、危なかったぜ...」と安堵するアレックスだったら、ハーレクインにはなりません(笑)。ここで、彼は急に去ってしまったハリエットにあっけにとられて呆然とするわけです。

 そこで、大事なキーパーソンが登場します。受付のオードリーです。全くの脇役ですが、ここで大事な役を負っています。 

「あの子はここの仕事も社長も大好きでした」

「社長はボンクラですか?」

  オードリーに言われて、アレックスは自分の気持ちに気づくのです。そして、自分の気持ちを正直に打ち明けようとハリエットの自宅へ出向き、告ってハッピーエンド。

 ハリエットは本当に運がいいとしか言いようがない...というのも、実は妊娠してたんです。一歩間違えれば、上司に弄ばれて身ごもったシングルマザーになっていたかも...。

 コミックでは、イタリアから帰国後の展開が早かったので、原作を読んでみましたが、原作も早かった(笑)。

秘書は秘密の恋人 独身富豪クラブ II (ハーレクイン・ロマンス 【ワイド版】)

 原作ではオードリーのセリフはもっと具体的です。

「前から思っていましたけど、女性のこととなると、社長って、ほんと無神経!」

「あの子は社長に恋して、それで会社を読めたのよ!どんなばかでもわかるわ。...(略)」

  「仕事も社長も大好き」の表現より「社長に恋して」の方が、アレックスが自分の気持ちに気づかせるには効果的に思えます。

 原作の前半は、アレックスとハリエットの言葉の駆け引きが面白かったです。割り切った関係だからと互いに冷めた言動を発しながら、めくるめく官能の世界に浸り、言葉とは裏腹に相手の気持ちをあれこれ考えてはハラハラ・ドキドキ。それだけに後半バタバタっとまとまってしまったのはちょっと物足りない感じでした。

広告を非表示にする