鈴の本箱

本のこと、あれこれ(覚書)

億万長者の冷たい誘惑

 藤田和子さんが描くハーレクインのキャラクターが好きで、今回新刊が出たというので原作より先にこちらから読みました。

 『億万長者の冷たい誘惑』 原作:ミランダ・リー

億万長者の冷たい誘惑 独身富豪クラブ ? (ハーレクインコミックス)

(以下ネタバレ)

 主人公ベラはミュージカル女優として成功しているものの人生に行きづまり、疲れています。 そこで思い出したのが、以前継兄だったセルジオコモ湖にある彼の別荘を借りたいと申し出ます。久しぶりとなるベラからの電話にセルジオの気持ちは複雑に揺れるところから始まります。

 セルジオの父は老舗の皮革メーカーのオーナー。妻を亡くした父にベラの母親が巧く言い寄り妊娠を理由に再婚したのがセルジオが15歳、ベラが10歳のとき。ところが妊娠は嘘でセルジオの父の財力を得たベラの母親は娘を女優にするための資金を投じます。そんな継母を嫌っていたセルジオですが、大学の休みに半年ぶりに帰省したとき、16歳のベラが美しくなった姿に女性として意識してしまいます。

 ベラの舞台デビューが決まったころにベラの母親は離婚、できるだけベラには会わないようにしていたセルジオは大学時代の親友、アレックスとジェレミーと「独身クラブ」を作り、3人で創業したワインパブが大成功、フランチャイズ化して大きくなったのを機に売却し、目標どおりの富豪となります。そして次のステップとして、昨年亡くなった父の会社を立て直し、そろそろ結婚でも..と思っていますが、親友たちはセルジオが3年前に偶然ベラに会ったときずいぶんと荒れたこと指摘し、結婚後にベラに再会したら結婚生活は破綻するだろう警告します。セルジオはベラのことでこんなに悶々とするなら、いっそのこと誘惑して別荘で一緒にすごして思い切り楽しめば踏ん切りがつくと、さっそく行動に移します。

 そして別荘で久しぶりの再会をした二人。睡眠薬がないと眠れないというベラにセルジオはこんな提案をします。

よく眠れる方法があるって言ったろう?

疲れ果てるまでセックスする

 これは富豪でハンサムなセルジオであり、そしてベラの初恋の相手がセルジオという前提だからロマンスとなるわけで、普通の会話じゃありえない(笑)

 ベラもそれなりに男性経験はあるわけで、面倒な感情抜きで、この夏だけの”特典つきの友達”の申し出を受け入れます。二人はベッドの中で相性の良さを実感しつつも、互いの感情を抑えています。やがて一緒に過ごしているうちに感情が抑えきれなくなりそうな矢先に、セルジオの親友のジェレミーが遊びにきて、留守だったセルジオとの電話の会話をベラは耳にしてそれを誤解し、別荘を出てしまいます。慌てて追いかけたセルジオが事情を説明し、誤解を解いてプロポーズというハッピーエンド。

 コミックでは全体的にきれいにまとめてあって、セルジオは誘惑する悪い男になりきれず、内心はとても純情でベラを大切にする男性という印象です。

 

 さて、原作はこちら。

 『億万長者の冷たい誘惑』ミランダ・リー著 加納三由季訳

億万長者の冷たい誘惑 (ハーレクイン・ロマンス)

 試し読みができたので、読み進めていくとセルジオが3年前に偶然ベラに会ったときずいぶんと荒れたというシーンがあり、コミックではさらっと1ページでまとめていますが....

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 原作ではパーティ会場で端正な顔立ちのフランス男とベラが踊っている姿にセルジオは嫉妬で悶え苦しみます。

 どれだけ悶えたかと申しますと... 

 ようやくベラがセルジオに気づき、フランス男を置いて近づいてきたとき、何を話したかは覚えていない。(略)だが、ベラの唇を見たとたん体が無慈悲にも反応し、彼女の言葉が耳に入らなくなった。ベラがそばにいるだけで抑えきれないほどの欲望がわいてきたのは、あの夜が初めてだった。

  さらに、

 家に帰って一人きりになると、セルジオはやっと感情を吐き出し、浴室のドアに拳をたたきつけて指を二本折った。そして冷たいシャワーを浴びながら、悔し涙を流した。

 指の回復とベラへのどうしようもない思いが和らぐまでは、数週間かかった。

  これが、アレックスとジェレミーが指摘した「荒れた」セルジオなわけです。指を二本を折るほどの欲望とは、純情というより肉欲的すぎて、思わず爆笑してしまいました。

 指が回復したセルジオはその後どうしたか...

  次の一ヶ月、セルジオは数年分以上のセックスをした。どれも一夜限りの関係だ。相手はみな青い目のブロンド美女で、見事な体をしていた。

  数年分以上って...(笑)

 試し読みをした限りセルジオのイメージが野獣化してしまいそうで、私はコミックの方がいいと思えた作品でした。コミックと原作の読み比べ(今回は試し読みですが)も楽しいものですね。

 ちなみに副題の「独身富豪クラブ」は、シリーズ3部作で、親友のアレックス、ジェレミーと続きます。セルジオなみの情熱的(肉欲的?!)な二人のロマンスもかなりお熱いものかもしれません(笑)

 

<追記>

 オリジナル原作を忘れていました。原題は『The Italian's Ruthless Seduction』。主人公のセルジオはイタリア人なので「イタリア男の冷たい誘惑」といったところでしょうか。こちらも試し読みでシャワールームで指を折ったシーンまで辿れました。

It was only after Sergio had arrived home and was safely alone in his bedroom that he'd given vent to his explosive emotions, smashing his fist through the bathroom door, breaking two fingers in the process, after which he'd plunged himself into a cold shower and wept like a baby. 

  "vent to his explosive emotions"、”wept like a baby"の表現をみると、感情が爆発してバスルームのドアをゲンコツで打ち砕いて、指二本を骨折して、そのあと冷たいシャワーを浴びながらワァァと嘆き悲しんだという、もうこれは野獣です(笑)

 コミック、和訳版、原作の表紙は、どれもセルジオが覆いかぶさっていて官能的ですが、指二本の骨折はこういった体勢が取れないわけですから、回復するまでの禁欲期間はさぞやつらかったであろうと思ってしまうのでした(笑)

The Italian's Ruthless Seduction (Rich, Ruthless and Renowned)