鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

2015-01-01から1年間の記事一覧

ひとふさのぶだう

近所のショッピングモールの催事で、古書店が出店していたので立ち寄ってみました。小規模なので、展示されている書籍は多くありませんが、それでもいまでは絶版となった全集ものや写真集など興味深い本が並んでいました。その中で目を留めたのがこの一冊。 …

The Snowman

テレビチャンネルを何気なく回していたら、ETVで『スノーマン』のアニメが流れていました。クリスマス・イブの23時に『スノーマン』。こんな時間に?と思いましたが、「あら、かわいい」と母がハマったので、そのまま一緒に見ることにしました。 絵本として…

吾輩は看板猫である (文春文庫)

表紙を見ただけで即買いの一冊。 『我輩は看板猫である』 下町の商店街ほど、猫にとって共生できる理想的な場所はないかもしれません。室内飼いと違って、自分の住む店からの出入りは自由だし、自分の飼い主と付かず離れずよい関係を保ちつつ、近所の店主や…

毒親の棄て方

最近、親子関係の事件が多い気がします。書店に行くと家族問題を取り上げた書籍が平積みしてありますし、昨日もこの下書きを書いているときに、ネットで40代の娘が80代の実母を杖で暴行し死亡させたニュースがありました。こうした高齢の母親の場合「介護疲…

非色

再読したい本の一冊に有吉佐和子著の『非色』があります。 1967年に初版された古い作品で差別がテーマになっています。現在でもヘイトスピーチやら数々のハラスメントなど、差別に関する問題がニュースで取り上げられているのをみると、誰の心にも「差別」は…

翻訳夜話

外資系法律事務所に勤めていたころ、親しかった翻訳チームの同僚から、翻訳の苦労話をよく聞かされました。法律文書ですから一字一句の解釈の違いは大きく影響しますし、かといって直訳すると文章としておかしくなるし、それを直すことで、原文と離れていな…

スクラップ・アンド・ビルド

羽田圭介著『スクラップ・アンド・ビルド』読了。 広告や書評を先に読んでしまったせいか、読む前と読了後と違う印象を持ちました。(以下、ネタバレ) 主人公の青年、健斗はカーディーラーを退職後、資格試験の勉強をしながら再就職活動中。同居する祖父は…

火花

遅まきながら、又吉直樹著『火花』(文藝春秋9月号)をやっと読了。 普段からお笑い番組を見ないので、芸人とかタレントとかの違いもよくわかっていない私にはこの作品は新鮮なテーマでした。「笑わせる」ことだけを追求していく芸人の苦悩や葛藤が徳永によ…

文化講座

先日、明治大学の公開文化講座『文学と読書の現在 第一線からのまなざし』に参加しました。こういった大学の文化講座は初めてです。 講座は二部構成になっていて、第一部「文学とジャーナリズムの間」前文藝春秋社社長の平尾隆弘氏による講演でした。 この講…

読書について

光文社古典新訳文庫のショーペンハウアー著『読書について』読了。この作品は岩波と光文社で出版されていますが、新訳というので光文社を選びました。 「自分の頭で考える」、「著述と文体について」、「読書について」と三部構成。 ここでは「読書について…

こころの旅

自分の二十代を振り返ると、やたらと悩んでばかりいて、自分のキャパが小さいためか、熟考を重ねる余裕もなく、まるで即効薬を求めるように、手当たり次第、本を読み漁っていました。 当時、紀子様の愛読書ということで話題になっていた神谷美恵子『こころの…

合唱曲

先日の三連休に行われたNコンことNHK合唱コンクール。毎年欠かさず見ている母親に付き合って、高校生の部を見ました。 毎年、テーマをもとに、小、中、高校の課題曲が発表されますが、私が特に注目しているのは高校生の課題曲です。現在活躍中の詩人のみなら…

魔女からの手紙

10月に入る前から、気の早いお店にはハロウィン商品が並んでいます。日本のかぼちゃは緑色の皮のものが主流ですが、最近ではオレンジのかぼちゃをあちこちで見かけることが多くなりました。街路樹の木々が街を色づかせる前に、かぼちゃのオレンジが広がりそ…

論理思考力をきたえる「読む技術」

積ん読本の一冊、本日読了。 『論理思考力をきたえる「読む技術」』 今年初めに大学生の甥っ子と食事したときに、たまたまセンター試験日が近かった流れから現代文の長文読解問題の話をしたことが、この本を買うきっかけとなりました。 書店にある赤本などの…

一日江戸人

NHKで放送されていた『コメディーお江戸でござる』。ご贔屓の女性演歌歌手目当てに母がよく見ていた番組でした。私は私で、勤め先からまっすぐ帰宅するとちょうど番組が始まるというタイミングだったので、夕食をとりながらなんとなく見ていました。 番組の…

誰も聞いていない(月刊『図書』第797号より)

今日はお天気がいいので、部屋の整理をしていたら、岩波書店の月刊誌『図書』7月号が出てきました。 図書フェアでもらったもので、読みかけだったことを思い出しながら、パラパラめくっていると、高村薫氏の『作家的覚書』のエッセイが掲載されていました。…

カナリア

シルバーウィークと名付けられた連休が始まりましたが、敬老の日にちなんで、母が好きな童謡を収めた復刻版CDをプレゼントしました。 『復刻 懐かしの童謡歌手たち 川田正子・孝子』 昭和初期の香りプンプンのモノラルなサウンドで、古いレコードを回したと…

自分のついた嘘を真実だと思い込む人

日曜日の朝刊で、広告欄に朝日新書の新刊の紹介がありました。 あなたの身の回りには、まるで「息をするように嘘をつく人」はいないだろうか。しかも自分がついた嘘なのに、「真実」だと思いこみ、いつのまにか被害者面。本書ではその精神構造を読み解き、被…

沖で待つ

『芥川賞の謎を解く』の巻末にある過去の候補者と受賞者の一覧が見ながら、女性の受賞作品はまだどれも読んだことがないことに気がつきました。アマゾンで芥川賞作品を検索しながら選んだのがこの一冊。 絲山秋子の『沖で待つ』。 『勤労会社の日』、『みな…

小さなうたがい

ACジャパンのCMで流れた『こだまでしょうか』で金子みすゞの作品が注目されてからか、かわいい絵本や装丁が施された作品集や詩集が書店に並ぶようになりました。 ときどき、詩の一節だけが一人歩きしているときがあります。 『わたしと小鳥と鈴』 わたしが両…

芥川賞の謎を解く

『文藝春秋』の「芥川賞発表と受賞作全文掲載号」には、候補作の選評が載っています。選考委員たちの文学論がその選評を通して垣間見れて、作品より先に読んでしまいます。 その選評を全て読み込み、賞の裏側を描いた一冊。 『芥川賞の謎を解く』 『芥川賞』…

大方言

かかりつけの歯医者さんが結構遠いので、移動や待ち時間は読書タイム。行きの電車の中で読みかけの本を読み終えてしまったので乗換駅の御茶ノ水で「丸善」に立ち寄ると、「炎上覚悟」の赤い字が目に入りました。 百田尚樹の『大方言』 帯を読むだけでも著者…

命売ります

十八日付けの朝刊の広告欄に出ていた広告がずっと気になっていて、書店でもおすすめのポップ広告にものせられてしまってつい購入。 三島由紀夫の『命売ります』 能動的に死のうと思ったら死ねなかったから、今度は受動的な方法を考える羽仁男は「命売ります…

ぽたぽた (名作童話集)

三木卓の短編童話集『ぽたぽた』 主人公リョウが身近な生き物と交流したり、生活の中で感じた素朴な疑問を描いた作品集です。ほのぼのした作品のほかに、わりとシュールな作品もあります。私が特に印象に残ったのはこの二作。(以下ネタバレ) 『びょうき』 …

穴埋め

地元の書店には、夏休みの課題図書がまだ平積みされています。 私が小学校の時は課題図書の読書感想文は全員提出だったので、夏休み初日には多くの生徒が近所の本屋に行き、狭い店内には課題図書を抱えた子供たちがレジの前に列を作ったものでした。 今から…

すばらしい墜落

ニューヨークに暮らす中国系移民の生活を描いた短編集。 ハ・ジン著の『すばらしい墜落』 著者のハ・ジンはアメリカの中国系作家ですが、アメリカ生まれではなく、中国の大学で英文学を学んでいます。(この作品のオリジナルは英語で書かれたものです。) 私…

ぼくがぼくであること

岩波書店の目録から選んだ一冊。主人公の秀一に親近感を感じました。 『ぼくがぼくであること』(岩波少年文庫) 1969年の作品。昭和40年代の高度成長期、東大闘争、全学共闘会議の時代でもあります。主人公・秀一の平田家は、兄の良一(大学生)、優一(高…

ウォルト・ディズニー―創造と冒険の生涯

8月に入って、夏休み真っ盛り。どこのテーマパークも賑わっているのではないでしょうか。 世界的に有名なネズミの国が日本にオープンした翌年、私はそこの新入社員でした。4月入社式を控え、3月中旬ごろから研修が始まった記憶があります。その少し前に研…

第四権力 巨大メディアの罪

経済小説は映像化されている作品も多いので、わりと好きなジャンルですが、高杉良の作品を読んだのはこれが初めてです。 『第四権力 巨大メディアの罪』 行政、立法、司法に次ぐ権力として「メディア」を第四の権力として捉えたものです。でも、メディアは「…

おにぎり

体温並みの猛暑日が続くと、食欲も減退...と思いきや、梅干し入りのおにぎりだけは別。海苔の香りと酸っぱい梅干しで、失いかけていた私の食欲は見事に復活するのでした。母が作るおにぎりは海苔でごはんを完全に覆う丸い形ですが、私は高校のときから三角に…