十八日付けの朝刊の広告欄に出ていた広告がずっと気になっていて、書店でもおすすめのポップ広告にものせられてしまってつい購入。
三島由紀夫の『命売ります』
能動的に死のうと思ったら死ねなかったから、今度は受動的な方法を考える羽仁男は「命売ります」と広告を出すところからはじまります。
「命」など惜しくなかったはずの羽仁男ですが、命を買いに来た人たちと関わることで少しずつ気持ちに変化が起こっていきます。
私にとって三島由紀夫は「美」にこだわりのある作家というイメージがあります。それは作品の文章からもそう感じますし、三島直筆のきれいに書かれたノートや手帳を見たときも、インタビュー映像のよどみない話し方からもそういう印象を持ったのかもしれません。
純文学とは対照的な通俗的な小説も、三島由紀夫の美しい文章は変わりなく、読んでいると主人公・羽仁男とともにスリリングな世界に引き込まれていきます。
帯に書かれているとおり、まさに三島由紀夫の極上エンタメ小説でした。