鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

チョコレート

 最近では季節商品が実際の季節よりかなり早く商品が並ぶ。まだ残暑で汗だくの中、ハロウィングッズが店先に並んだり、ハロウィンが終わらないうちにブラックフライデーの予告、同時にクリスマスケーキやチキンとおせち料理の予約スタート。年末はおせち以外に蟹やらエビやらの海鮮ものの通販案内が新聞紙面を賑わす。そして年が明けたとたん、節分、恵方巻の予約である。早割、早割とせっつかれている感じがあって、季節感を感じるひまなどない。

 久しぶりにショッピング・モールに出かけた。メインフロアの中央にはひな人形が飾られており、その先のイベント広場ではバレンタインのチョコレートが並んでいた。まだ1月なのに、2月3月の景色に囲まれる。

 チョコレートがならぶショーウインドの上に積まれたいくつかの商品がすでに品薄になりつつある。早く準備する女子がいるのかもしれない。

 パケ買い目当てで商品を眺める。本命などいないし、義理チョコを渡す付き合いすらしていないボッチおばちゃんは、今年も自分のために買う。

 

 私が過去に付き合った数少ない男性の中にチョコ嫌いの人がいた。

 20代後半のバブルの頃で同じ職場の人だった。まだ付き合い始めて日が浅い頃のバレンタインのときに、デパ地下で奮発したチョコを渡したとたん「あ、悪い。俺、チョコ嫌いなんだよね。義理チョコも正直困ってんだ。」と言われた。

 そういえば、ファミレス・デートのときはデザートを頼んだことなかったっけ。屋台巡りのときもスイーツ系は大判焼しか食べたことなかったことに気づいた。割と節約家だったので、節約のために食べないのだろうと思っていた。

 「あ、じゃ、これやめて、和菓子にしよっか?」とひっこめたら「あ、一応もらっとく。別に食べられないわけじゃないから」。

 チョコ嫌いなことを知らなかった自分が悪いのだが、このときはなぜか(一応って何様、こいつ)と思ってしまった。デパ地下チョコだからとりあえずもらってやるよという印象を受けてしまったのだ。そしてあっという間に彼へのポジティブな気持ちがネガティブなものになった。

 そしてホワイトデーにもらったヨックモックのクッキー。それなりに嬉しかったが、義理チョコのお返しのクッキーと同じであることが判明。

 私は本命じゃないんだと思ったころ、転職希望していたところから採用通知がきた。迷わず転職し、彼とは距離を置くようになったら急に結婚を匂わすようなことを言い出したが、戯言にしか聞こえない。そして、私の転職先についてあれこれ言い出し、そんな態度に嫌気がさした。そして自分の男を見る目のなさを深く反省するべく、年度が変わったころにお別れした。

 そんなことを思い出しながら、商品を見る。今は自分へのご褒美だから、見るのも楽しい。今年は猫のイラストものが多い気がする。私としてうれしい限りだが、多ければそれはそれで悩ましい。買っても使うことはないであろうかわいい缶や箱はどうしてこうも魅力的なのだろう。

 年末断捨離したのに、お金もないのに、こういう商品に対する購買意欲が財布のひもをダラダラに緩めてしまう。

 買い物をし終えた後だったので、幸いにもお財布の中は冷え込んでいたので、500円以下のものを探すことにしたが、好みのものがなくイベント広場を後にした。

 無駄遣いをせずにすんだかなと思ったのもつかの間、ジュピターの店頭に輸入食品が並べてあった中にかわいい猫のイラストが目に入った。

HERSHEY'S Hungry Cat Box ナゲットスペシャルダークチョコレート アーモンド

 猫パッケージの(紙箱)ハーシーのナゲットチョコだ。アーモンドのナゲット・チョコは好きなチョコ。値段も500円以下。

 最後に勤めた外資系企業でHome Leave(帰省)から帰ってきたアメリカ人たちが大きな袋のハーシーのキスチョコやナゲットチョコを買ってきたのを思い出す。ハーシーの新商品もあって、チョコレート談議に花が咲いた。

 つまらない男のバレンタインの思い出は、このハーシーのチョコによって職場の楽しい思い出に塗り替えられた。ありがとう、ハーシー。