鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

詳説 政治・経済(山川出版社)

 以前、山川出版社の『政治・経済用語集』のブログ記事を書いてから3年近く経ちました。新聞やニュースでわからない言葉を調べるのに今も役立っている一冊です。

   オープンキャンパスの案内が大きく新聞紙面を占め、入試情報もチラホラ目にする機会が増えました。数年前、当時高校2年生だった甥っ子が遊びにきたときに、受験科目に選択科目が多いことを知り驚いたものです。

 先日、早稲田大学が新しい入試制度として、2020年度から政治経済学部の入試は数学を必修にするという記事を見て、思わず「えぇ~?今まで必修じゃなかったの?」と絶句。

 私が卒業した能天気な女子大/短大の文学部ですら数学は必修だったのに...。どうりで甥っ子と話したときに、私の時代、必修科目だったものが選択科目になってることに驚くたびに、「おばさん、時代が違うよ」とあっさり言われましたっけ(笑)。

 『政治・経済用語集』の中に貿易や国際収支などに触れているので、教科書ではさらにグラフや数字を使って説明しているのだろうと思い、山川出版社の『詳説 政治・経済』を買ってしまいました。(倫理社会も...(笑))

詳説 政治・経済 改訂版 [平成30年度改訂] 文部科学省検定済教科書 [81/山川/政経316]

 一例として、「国際収支の仕組み」では日銀のホームページから引用した日本の国際収支の一覧(右上)が掲載されています。下のグラフは「円の対ドルレートと経常収支の推移」です。

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 といっても、経済用語の説明がメインなので、グラフの見方という内容ではありません。私がなぜこうした授業でつまづいてしまうのか、よくわかります(笑)。

 このグラフでは赤い折れ線グラフは円相場の推移を表しているんですが、授業では「貿易収支が東日本大震災後は赤字を計上した」とか「輸出の内容が繊維、鉄鋼、そして機械製品へと移行している」という内容なので、円相場の推移なんてどうでもいいんですよね。

 私はそのどうでもいいような円相場の推移に関心がいってしまうタイプなんです。これじゃ、点数が伸びるわけない(涙)

 また、もう一つ気づいたのは、教科書の記述だけではいまひとつわからない。私の偏差値は今もビリギャル(涙)

 例えば、「国際収支」についての説明。教科書では

一国の一定期間(通常は1年間)における対外経済取引の収支を示したものが国際収支であり、フローにかかわる概念である。国際収支は、「経常収支」「資本移転等収支」「金融収支」からなるが、統計上の誤差を調整する誤差脱漏も含まれている。

  む、ムズイ。私にはなんのこっちゃ状態。これで”詳説”とは、全然詳しくないんですけど(笑)。

 『政治・経済用語集』では

1年間に外国との間で行った、貨幣の受け取りと支払いとの収支決算のこと。この収支決算をまとめたものを「国際収支表」、または「国際収支統計」という。財、サービスなどの取引である経常収支と、資金の流れである資本収支とに大別される。

  参考書だとすっきりまとめてあります。というか、単に私の理解力の問題かもしれませんね。

 教科書を読んだだけでは理解できないのはどうしてだろうとの疑問に、鎌田浩毅の『理科系の読書術』の中にその答えがありました。

たとえば、学校で指定される教科書は、普通は知らないことばかりが書いてある。これは読んでも頭が疲れてしまう。教科書は先生の指導の下に読み進めるには便利だが、一人で読むようにはできていない。あまりにも無駄を省いた記述になっているため、独学に向いていないのだ。

  これで納得。「教科書を勉強しただけでは大学には受からない」という甥っ子たちが言うのもごもっとも。

 運悪く、先生の指導がよろしくなければ、指導力の高い塾へと流れていくのは当然で、そこで教科書よりもわかりやすく解説された学習参考書を使えばさらに理解が深まります。佐藤優氏の講演で学習参考書を薦めた理由もここにあるんですね。

 試しに比較すると、教科書のボールドで強調された用語の数は、用語集より少ないです。「国際収支」について教科書では「グローバル=インバランス」や「対外投資」についてはでてきません。授業の中で先生が説明してくれるんでしょうけど、私のような生徒は聞いてないから、わからないままでしょう。

 最近、「学び直し」なる書物が多く出ているのも、池上彰林修の番組が人気なのも、社会人になって改めてちゃんと知りたい、知識を得たいと思う人が増えているのではないかと思います。

 選択科目ばかりで過ごしてきた甥っ子たちの将来を考えると、ちょっぴり叔母心が疼いてしまいました(笑)。