鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

シンデレラを探して

 部屋の整理をしていたら、いくつかの洋書の中にハーレクインがありました。

 カナダでのハーレクイン体験は過去記事に書きましたが、後日談というか、図書館や本屋で立ち読んだハーレクインが情熱的すぎてドン引きだったことを、下宿先のお母さん(ホストマザー)に話したら大笑いされて「きっと'Desire' シリーズを選んでしまったのよ」と言われ、ハーレクインには各シリーズがあることを教えてくれました。

 そんなこともすっかり忘れ、今でも表紙にばかり目がいって、シリーズの違いすら気にも止めない有様...(笑)

 日本へ帰国するときに、「長旅で退屈になったときに読んでみて」といただいたのがBetty Neels著『The right kind of girl』。

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 タイトルは「(ぼくに)相応しい女の子」、「ぼく好みの女の子」といったところでしょうか。この作品はプラトニックな内容で、ラストでやっとキス・シーンが出るくらいです。和訳版がなかなか見つからないと思ったら、タイトルが...(笑)

『シンデレラを探して』

シンデレラを探して (ハーレクイン・イマージュ)

 

 なぜ「シンデレラ」なんでしょうね(笑)。原作の英語がスラスラ読めたわけではないので、どんなストーリーだったかうろ覚え...。マケプレでお手頃価格だったので改めて読んでみました。

 (以下ネタバレ)

 主人公のエマは、気難しい未亡人宅に使用人として働きながら、胃潰瘍を患う母親と慎ましく暮らしています。ある日、母親と一緒に気晴らしをしようとドライブに出かけた矢先に母親の具合が急に悪くなり、そのとき助けてくれたのは、高名な外科医サー・ポール・ワイアット。手術も担当し、無事に退院。その後もポールは母親の様子を心配してエマの家へと頻繁に訪ねます。

 ポールが学会で海外出張しているある日、母親は塞栓症で突然亡くなってしまいます。一人になっても健気なエマでしたが、ポールが再び現れます。彼の姿をみたエマは緊張が解けて泣き崩れてしまいます。このあたりが「シンデレラ」的要素なのかもしれませんね。困ったときに現れる王子様みたいな(笑)

 そしてエマにこれからのことを聞いたポールは突然プロポーズします。エマは驚いてためらいますが、エマを一人にしておくわけにはいかないとポールは半ば強引に自宅へ連れていきます。彼の家には家政婦がいて快く彼女を受け入れ、結婚準備は進みゴールイン。ハネムーンもなく、ポールは相変わらず仕事が多忙ですが、エマとの時間をできる限り作っては食事やお茶の時間を一緒に過ごし、出張のときはかならず電話もします。

 そしてハプニングが起きます。ポールに片思いしているダイアナが「あなたは彼の好みじゃないわ。彼が愛しているのは私よ。私も彼を愛してる」とまあ、ベタなライバルがやたらと横槍を入れて、純朴なエマがそれに一喜一憂して、それがポールへの態度に表れてしまい、二人がなんとなくギクシャク...。やがて二人が互いに思っていることを打ち明けることになりハッピーエンドいう定番の流れですが、仲直りのベッドシーンもなければ、ダイアナがハニートラップをかけるなんてこともなく、内容はいたって穏やかです(笑)。

  ポールの唐突なプロポーズ、それはエマにとってそう思えただけのように思いました。エマの勤め先だった未亡人宅へ往診したときや、ハーベイ宅のベビーシッターをしていたときも、ボールはそこでエマを見かけています。母親の看病をしている姿や職場での仕事ぶりを見て「こういう子がいいなあ」ぐらいは思ったかもしれません。そうなると、原題の方がしっくりいきます。

 いつでも冷静なポールがエマに気付かれずに気遣うあたりに思わずキュンとなります。眠っていた「夢見る夢子」が覚醒した作品でした(爆)。彼女の描くプラトニックなロマンスは時代を感じさせるかもしれませんが、やたら開放的なものよりかえって新鮮に感じました。

 さて、ウィキによれば作者のベティ・ニールズは、看護師と助産師の資格を持っていて、戦時中はフランスやスコットランドで傷病兵の看護に当たり、現地で知り合ったオランダ人男性と結婚。オランダで過ごしたのち、イギリスへ戻ってからも看護師として働いていました。そのせいか、彼女の作品のヒーローは医者が多く、オランダもキーワードの一つだそうです。

 作家デビューは看護師をリタイヤした59歳のとき。地元の図書館で一人の女性がロマンス小説を読んで泣いているのを見たのがきっかけで、単調なリタイヤ生活を送る気がなかった彼女はさっそくタイプライターを買い込んで執筆活動開始。それから90歳で亡くなるまで100作以上も出版されています。

 彼女の行動力はこうして100作以上の作品となっていくわけです。そのバイタリティに刺激を受けました。他の作品も読んでみようと思います。