鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

夜船閑話

 難病治療を始めて数年が経ったが、今も薬の副作用と更年期症状、そして梅雨に入って体調は絶不調。とはいえ、コロナのワクチンすらためらっているのに、これ以上やたらと薬は飲みたくない。

 そうなると、あとは怪しい民間療法?それとも気合?おばちゃん思考になっている自分にますます落ち込む。

 面白い本でもないかなとネット検索していたら、禅の健康法が載ってるという白隠禅師の法話『夜船閑話』を見つけた。

夜船閑話 白隠禅師法語全集 4

 白隠禅師自身が厳しい修行のなか、「禅病」(うつ、のぼせ、手足の冷え、不眠,等)になってその養生法を求めて白幽という仙人から教えてもらって克服できたというお話。

 禅の健康法とは内観法、軟酥の法で、気海丹田を意識した呼吸で「頭寒足熱」を促す。つまり禅の基本的な呼吸法を意識するというもの。

 How to本ではなく、あくまで法話なので、仙人やら他の禅師たちの話も絡めた内容でおもしろくてわかりやすい。

 道をきわめてその極に達した者は、常に心気を下に充たす。心気が下に充つるならば、喜・怒・哀・楽・懼・楽・悪・欲という七情も動くことなく、風・寒・暑・湿などの四邪が外からうかがい浸すこともないから、気血の循環は充実し、心神も健やかになる。(略)ところが、凡庸な者はこれに反して、常に心気を上に向けてほしいままにしておくのである。こうして心気を上にばかり集めておくならば、左右の両手首にある脈どころがそこなわれ、眼・耳・鼻・舌・身・意のはたらきは萎縮し疲れるようになる。

 『荘子』内篇に<真人は踵で息をするが、普通の者は喉で息をする>と言うのはこのことである。

 無意識に息をつめているというか、浅いというか、短くなっているから、意識して腹式呼吸で深~く長~く息をするということである。

 で、さっそく試す。食後、少し消化不良気味で胃もたれしていた。腹式で腹いっぱい息を吸う。ますます胃が痛くなりそうだったが、繰り返していくうちに、ギュルギュルとお腹が鳴りだした。へその周りを集中して息を吸ったり吐いたり、お腹が出たりひっこんだりと、自分でも滑稽なくらいだ。そのうち、胃もたれが収まった。

 「背に腹はかえられぬ」ではないが、背中を守るためといっても、五臓六腑がおさまっている大事な腹を犠牲にできないわけで、腹式呼吸でその五臓六腑を活性化するのである。

 心気を肚に充たす。深い呼吸をしながらPCに向かってみる。意外とこれが難しい(笑)

 こんな療法、本当に効果あるのかしらんと訝しむ読者を見透かしたかのごとく、禅師はこう述べている。

 さて、読者諸子よ、老いぼれ白隠は、でたらめ話で人を迷わすものだ、などと思ってはならない。この物語りを書いたのは、もともと優れた素質があって、一元の下に悟入するような俊才のためではない。私と同じような鈍根で、私と同じように労病にかかった人たちに読んで頂きたいのだ。これをよく読んで子細に修め観察されるならば、必ずやいささかの補いになることであろう。

 そんな白隠禅師に親しみを感じた一冊になった。合掌。