鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

母の転倒

 15時の時報がラジオから流れたとたん、ドスン!と洗面所から音がした。あわてて「どうした?!」と駆け寄ると、母が横たわって「転んじゃった」。

 ひえぇ...どうするよ、と思った瞬間、この猛暑で額から流れる汗、汗、汗。

 「起き上がれる?」

 「ちょっと痛い」

 ええええええっ?!一昨日退院したばかりなのに、また逆戻りかよぉ....と心の中でトホホ状態

 「どこ痛い?」

 「手術したとこ」と左足をさする

 でも、右足の膝小僧に擦り傷がある。

 「右の膝を擦りむいたんじゃない?」

 「あ、そっちも痛い。腰も痛い」

 「どのへん?」とあちこち軽く押しながら「痛い?」と母の腰回りを検索するも、打った様子がない。

 「起きるの手伝って」というので、立ち上がるときの補助として使っているラタンスツールをあわてて持ってくる。

 立ち上がれたので、骨は大丈夫そう。退院したばかりで転んだショックの方が大きいみたいで、「ちょっと横になる」と言い出した。

 寝室へ行きあわてて布団を敷いて、エアコンをON。ベットがないので、今後は買った方が良さそうかなと思ったりする。

 ストック杖をつきながら部屋にきたときに、転んだ原因がわかった。杖の突き方がおかしいのだ。

 正しい持ち方がこれ↓

(By 株式会社シナノ

 ひじを90度で、上半身をまっすぐ。杖は足の横にくるはず。

 ところが母はアルペンスキーのスタートのような持ち方なのである。しかも幅も狭いので、背中が丸くなった状態で杖をつけば、足の前に杖がくるので、杖につまづいてしまう。

 母の背中は丸くなりつつあるが、まだ仰向けに寝られるので、腹筋と背筋が衰えているだけなのだ。それを腰を折った状態では四足動物と同様、上半身を杖と腕が支えるため、痛めた足の補助にならないし、下を向くから視界も悪い。うっかり杖がひっかかったり、滑ったりすれば顔面から転ぶことになる。

 リハビリで正しく使ってこなかったのだろう。変な癖がついていた。

 転んだショックでふて寝を30分ほどして、痛めた場所がないか確認にいくと、痛かったはずの場所の痛みが消えていた。安堵とともに、杖の突き方を話す。

 そして、夕食前に練習。背筋を少し伸ばしただけで、杖は身体の横にくる。習慣づけるにはどうしたらよいか考えたら、雪国育ちの母はスキーをやっていた。そこで、

 「スキーの制動のとき、ストックはどうしてた?」と聞いたら

 「制動のときはこうよ、こうだわよ」とスイスイ歩き出した。見れば正しい持ち方になっているし、上半身もかなり起き上がっている。

 「こっちのほうが歩きやすいわ」と言い出したので、「スキーの制動を思い出せばいいんだよ」とハッパをかけて、「山は白金ぇ~♪朝日を浴びてぇ~♪」と面白半分に歌ったら、母も一緒に歌いながらリビングルームを歩いている。イカレタ母娘である。

 夕食後、好物の寒天ゼリーを食べながら、再度「手術したところは痛くないの?腰は?」と聞いたら「ぜ~んぜん」で上機嫌である。

 入浴時に背中を洗いながら腰、尻、足を見たが打ち身もなく一安心。本人は風呂場でもスキーを歌う。この猛暑に素晴らしい選曲ではないかと、疲れた自分に自画自賛

 母が寝てから、こっそりアイスクリームを食べながらこうしてブログを書く。ささやかな自分へのご褒美である(笑)。