鈴の文箱

日々の雑感(覚書)、本のこと(ネタバレあり)

拾われた1ペニーの花嫁

 あけましておめでとうございます。

 昨年、隙間時間にチョコチョコ読んでいたロマンス小説。下書きしたまま忘れていた(笑)。

 レビューの評判が良かったので、選んだのがこれ。

  ハーレクインのMirabooks『拾われた1ペニーの花嫁』(カーラ・ケリー著 佐野晶訳)

 ヒストリカル・ロマンの長編。

拾われた1ペニーの花嫁 (mirabooks)

拾われた1ペニーの花嫁 (mirabooks)

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  長編とはいえ、登場人物が多くないし、舞台がころころ変わることもなく、比較的読みやすいと思う。(以下ネタバレ)

 サラ・ソフィア・ポール・デイヴィーズは未亡人。夫アンドリュー・ディヴィーズはポーツマスの王立食糧供給所の管理者だったが、彼の上官の濡れ衣を着せられて裁判にかけられる。無実を訴えたが、自ら命を絶ってしまった。さらに、息子のピーターは病にかかり貧しさゆえになくなってしまう。

 バースの職業斡旋所でなんとか新しい仕事を見つけてもらい、馬車代ぎりぎりの状態でミセス・モード・コールのコンパニオン(話し相手)としてコール家を訪れるが、ミセス・モードはその前日に亡くなっていた。コール家からサラの雇用は白紙と言われ、途方に暮れる。

 手提げ袋には1ペニーだけ。通りで見つけたドレイク亭に入り、紅茶1杯を頼み、今後のことを憂いている。

 そのドレイク亭にチャールズ・ブライト卿がいる。長年の海軍提督の生活から陸へ上がったばかり。二人の姉のおせっかいな世話焼きにうんざりして、部下のバッチソープの妹、プルネラと結婚するつもりだった。不器量で行き遅れている彼女を彼は鼠譲とよび、そんな彼女が、家事をちゃんとこなし目立たないようにすると請け合ってくれたのだ。

 またこの結婚でおせっかいな二人の姉を遠ざけたい狙いもあった。チャールズが退官後購入した家は、海原を見渡せる絶景の景色の場所だが、屋敷は以前所有していた貴族が歓楽目的で建てたもので、調度品やインテリアは売春宿そのもの。一度、その屋敷を見せたせいか、プルネラは現れなかった。

 待ちぼうけをくらっているチャールズの目にとまったのは、紅茶をちびちび飲んでいるサラだった。給仕がオーダーを取りに来ても断っている様子を見たチャールズは一緒に食事をしようと給仕をうまく使って彼女と話す機会を得る。サラは夫のことは詳しく話さないので、チャールズはサラの苗字がディビースとは知らず、ミドルネームのポールが苗字だと思っている。

 そのときは、食事をして別れたが、その後寝る場所に困ったサラは教会に行くと、チャールズがやってくる。結局、プルネラは現れず、とにかく誰かと結婚せねばという彼は、サラに結婚を申し込む。

 なんだかんだと悩むが、結局サラは結婚を承諾。売春宿のような屋敷をまともに整え、使用人も雇う。チャールズの提督時代からの忠実な部下で、執事のジョン・スターキーもいる。

 契約結婚といいつつ、チャールズはサラにそれなりの身なりをとドレスを注文させて気前がいい。二人の姉との対面もサラはうまくやってのける。やがて二人は契約結婚のはずが、少しずつ愛に目覚めていき、やがて官能の世界へと流れていくという、ハーレクイン・パターン。

 サラの新しいドレスが届き、試着するため図書室に入る。チャールズも入る。そして服を着るどころか、そこでめくるめくる官能の世界に入る。そのとき、執事のスターキーがドアを開けて二人のすっぽんぽん姿を見てしまう。

 スターキーは便宜的な結婚だったのではと提督をやんわりと諭すが、見られた恥ずかしさとプライドの高いチャールズはスターキーに私的な問題に口出しするなとキレる。スターキーはもともとサラに対しては距離を置いていた。提督に言い寄る女の一人としてしか見ていなかったのだろう。チャールズがサラのことをよく知らないことを心配していたのだった。

 スターキーはひそかにサラの身辺を調べ、海軍省に相談し、海軍卿からチャールズへサラの本性を伝える手紙が送られた。チャールズの二人の姉にもそのことを話したのである。そしてチャールズはサラが裁判にかけられたディビースの妻と知り、切れまくるのである。サラを追い出し、そしてスターキーはクビ。

 サラを信じたいチャールズはサラの夫の真相を調べると、濡れ衣であることが判明。やっぱり彼女はサイコーということで、出て行ったサラを探す。なかなか見つからずようやく見つけた彼女のお腹がぽっこり。図書室ベビーと思われる(笑)

 誤解が解けて、互いにアイ・ラブ・ユーでハッピーエンド。

 

 感想としては、チャールズが軽率。サラがしたたか。気の毒なスターキー、いったところ。

 サラは近隣住民との付き合いも上手にこなすシーンが多く、サラの善人さを醸しだすためかもしれないが、そのあたりはパラパラと飛ばし読み。この作品のページ数が多いのは、心情や状況の説明が長いからだろう。ちょっと冗長なところもあった。

 思慮深さや貞淑さのイメージを持つサラが昼間から図書室で提督と官能タイムを持つあたりは、おいおいと突っ込みたいところだし、そんなサラの身辺を調べたスターキーをチャールズはなんで解雇するかなとも思う。ヒーローもヒロインも魅力を感じられなかった作品だった。